弘法の筆謬り

外資系企業で働く戦略コンサルタントのブログです

コンサルタントがプロジェクトを移るときの話

コンサルに限らず、最近はプロジェクトベースで仕事を進める企業も増えてきたものと思います。
プロジェクトが変わると、上司・部下が変わる他、仕事内容や扱う分野も大きく変わります。持ち運べるのはスキルセットや仕事のススメ方のノウハウ、心構え等ベースの部分のみです。新しいプロジェクトに配属されるときは誰でも不安です。環境が大きく変わることは不安で当然です。

この記事では、その不安に立ち向かうためにできることをお伝えします。

不安に打ち勝つためには、行動すること以外対処はありません。案ずるよりも産むが易しとは言いますが、しかしどう具体的に行動すればよいのかわからずただ手をこまねくよりも、以下のToDoをこなしてみてください。
この記事では特にコンサルティングファームでジョブを移る時をイメージして記載していますが、事業会社で組織を移ることになったとしても応用が利く内容となっていると思います。

1. 業界を知る

例えば小売業界に関するIoT関連プロジェクトに次にアサインになるとします。まずは、小売業界って今どういう状況なんだっけ?ということを知っていなければ話になりません。
手に入るのであれば矢野経済研究所など、レポート等で業界の大まかなトレンドやその背景、海外の潮流みたいなものをさらっておくと良いでしょう。

有料レポートを買うことが出来ない場合でも、業界を概観した「図解入門業界研究」シリーズなどはおすすめです。とても平易に業界を概観してくれています。本を1冊くらい、仮に経費で落ちなくてもプロジェクトが始まってからのパフォーマンスが高まることをかんがえるとケチるところではありません。

GoogleのPDF検索等で、業界の概要に関する資料であればある程度浅くともまとまったものがゴロゴロ出てくるでしょう。市場規模X兆円とか、そのCAGRなり代表的な企業の売上・営業利益なりというものは、ひととおり覚えておくと安心でしょう。

最近であればNewsPicksでその業界の話題の企業や動向が取り上げられていたりもするので簡単に検索しておくこともおすすめです。

2. クライアントを知る

業界のことがある程度わかれば、次はクライアントのことを知っておきましょう。
クライアントのことを知るというのは①クライアント企業のことを知ること、②クライアントのカウンターパート(直接のお客さん)を知ることの2つです。

まずはクライアント企業の業界における立ち位置を把握します。
市場におけるシェアはどう推移してきたのか、強みや弱みは何か、競合として意識されている企業はどこか、といった基本的な企業分析は言われなくても先にやっておいて当たり前レベルにしておくことが望ましいです。

会社の売上・営業利益・代表的な商品・サービス・従業員規模はもちろんのこと、有価証券報告書や決算説明資料に掲載されていることは頭に叩き込んでおきましょう。

次に、プロジェクトには必ずバイヤーが居ます。コンサルティングを依頼してくれた直接のお客さんのことです。
例えばある小売関連企業の商品製造本部のプロジェクトだとしても、その部署は会社全体においてどの様な位置づけで、何をミッションとして負っているのかといった話を理解するように努めます。

入手できる様であればRFP(Request For Proposal)や提案書も読み込んでおきましょう。クライアントがどういう文脈で何に困っており、どういうことをコンサルティングファームに依頼してきたのかということを知ることはとても重要です。

3. プロジェクトを知る

ここまで来てようやく、具体的なプロジェクトの資料等を見ていくことになりますが、注意すべきはプロジェクトに開始当初から突っ込まれることは稀であるということです。
すでに何らか動いているプロジェクトに途中参画することはスタッフであれば非常によくあることで、そしてそれ故キャッチアップがとても大変になります。

基本的には過去のミーティング資料は熟読しておくと良いでしょう。
調べても意味がわからない社内用語や、専門用語はあらかじめこの段で洗い出しておきます。
ただ、細かい各論の話を深く読み込みすぎることは無駄も多くおすすめしません。
プロジェクト進行上意識すべき論点がどういった形で変遷しており、その論点を明らかにするために今のプロジェクトはどういったアプローチを採ってきたのかということさえつかめれば、細かい話がすべて頭に入っている必要はありません。

大切なのは過去を知ることよりも、プロジェクトにアサインされた後の未来の方です。
前フェーズ、もしくは直前のミーティング資料を読み終えた時、次のミーティングのアジェンダはおそらくこれとこれとこれ…ということがイメージできるようになると最高です。

このあたりのキャッチアップの早さと理解の深さで、そのプロジェクトにおけるあなたの立ち位置が決まっていきます。一つ一つの細かい話を理解していても、「次にどうするか?」といった一歩を自ら踏み出せるかどうかが、作業者となるかコンサルタントとなるかの分かれ目です。

4. チームを知る

スタッフとして一番関心が強いのはこの部分かと思います。明日から働くのはパワハラで名高いマネージャーであるだとか、同期も同じチームにアサインされてるから比べられてしまうだとか、いろいろと負の感情が巻き起こるものです。
ただ、拒絶するよりも、その上司のクセなり関心事みたいなものを知ろうとすることが生産的です。例えばその上司の過去のプロジェクトの資料(今のプロジェクト案件に閉じる必要はありません)で、検討の細かさや思考の仕方、プロジェクトの進め方みたいなものが透けて見えてくるものです。

具体的に、次にアサインされるマネージャーの名前がわかっているのであれば、同期なり社内の情報に詳しい人にそのマネージャーが過去に作成したプロジェクト資料を共有してもらう等は一案です。

コンサルタントであればおよそだれでもプロジェクトの進め方やパッケージ構成はパターン化されてきます。この思考のクセを予めインストールしておくことができれば、いざアサインされた後にもスムーズに会話が進むことでしょう。

あともう一つとても大事なのは、パワハラ上司の噂として名高い人だとして、その人は誰に対しても必ずパワハラ上司ではない(かもしれない)ということです。
人と人の話ですから、どうしても相性や好き嫌いがあります。人によって接し方を変えることは決して褒められたものではありませんが、Aさんがあるマネージャーからパワハラを受けたとして、Bさんにとってはそのマネージャーはとてもいい人、と映っている可能性もあります。

噂は、悪いものばかりが勢いよく伝播します。実際に会う前からこの人はパワハラ上司だと勝手に決めつけてかかると、あなたが纏うその負のオーラが上司との接し方ににじみ出ます。
実は相性が悪くなかったとして、勝手にあなたが距離を置くと上手くいくものもうまくいきません。チームの人の噂話はしない、聞かないが理想です。目の前のその人を見ましょう

新しいプロジェクトというのは誰しも不安です。
不安だから備えてください。
備えているうちに、怖いものが減っていくと思います。