弘法の筆謬り

外資系企業で働く戦略コンサルタントのブログです

これからコンサルタントになる人へ

外資系企業で働くコンサルタントのこーぼーです。
苦労や悩みの記憶が新しいうちに、文章の形でこういった話をまとめておくことには一定の価値があると信じて筆を執ります。
あえて耳の痛いことも書いています。なぜならこの文章は新社会人の頃の自分自身に宛てた手紙でもあるからです。

1. 思い上がりを捨てて下さい

この記事をお読みになっている皆さんはおそらく輝かしい学歴・経歴をお持ちの方がほとんどかと思います。地元では神童扱いされてきたことでしょう。ビジコン出場経験?NPO?論文が査読雑誌に掲載されて学会発表で海外に?
もしくは中途入社の方かもしれません、なるほど前職ではそんなご経験が。即戦力じゃないか、こんな人材どこで…!と言われるような方かもしれません。

嫌味でもなんでもなく本当にすごいと思います。人一倍努力されてきたからこその功績だと思います。こういう実績に否定的な方もいると思いますが、そういった人ほど何者でもありません、無視して胸を張ってください、自信を持ってください。

ただ、ここでお伝えしたいのは、そういった成功体験がある人ほど、サービス業の極みであるコンサルティングにおいては壁にぶつかる可能性があるという話です。

新卒でも他の業界を受けた人の倍以上の給料をもらうことでしょう、内定者として就活メディアにコラムを書いたり、後輩就活生にアドバイスもしたことでしょう。

しかしあなたはコンサルタントとしては一年目です。
全てのプライドを捨てる覚悟を持ってください。外資系企業だろうがコンサルタントだろうが、高給取りだろうが、そんなことは一切関係有りません、一年目のあなたは想像以上に何もできません。

なぜなら、あなたにはまだコンサルタントとしての信用がゼロだからです。
「頭がちょっとだけよろしい、お利口な子」 でしかありません。

お客様は必ずしも高学歴ではありませんし、Officeすらまともに使えない、それでいて世渡りやプライドだけは一人前、そんなあなたが「負け組」と軽蔑するかもしれない人たちがクライアント企業になることも多いです。
コンサルティングは思った以上に人間としての価値が問われるところです。頭のキレで勝負できるのはほんの一要素です。人として好かれ、話を聞いてもらえるだけの信用力が今のあなたには何も有りません。

あなたがこれまで培ってきたかもしれない選民思想や勝ち組意識は、言葉の節々や態度ににじみ出てきます。そんな人間はクライアントから信頼されません。
クライアントを「客」だとか呼び捨てにするなんて論外です。お客様です。

まずは全てのプライドを捨てるところから始めてください。
コンサルティングを「してやっている」なんて気持ちは論外です、社内外問わず、全ての先輩社会人からあらゆることを学ぶ姿勢で居てください。

2. ルールや正解を探さないで下さい

コンサルタントとしてまずぶち当たるのは、自分が何をしてよくて、何をしたらいけないのかというルールでしょう。

結論、そんなものは有りません。
もちろん世の中には憲法や法律があり、会社にも社員規定があります。極論そういったベースのルールさえ守っていれば基本的にコンサルタントは肩書に縛られず、何をやっても良いのです。 それがお客様への価値になる限りにおいては。

あなたの肩書はアソシエイトかもしれません。アナリストかもしれません。コンサルティングファームの中では最も時給が低いあなたには当然雑務が降ってきます。こういったことは当然の様にこなすわけです。
一方で、例えばストーリーを考えるのはコンサルタントの仕事、論点を考えるのはマネージャーの仕事、と切り分けてはいけません。 重々しい雰囲気の最終報告で事前にマネージャーの同意なしで発言してはいけないなんてルールもありません。 クライアントへの価値になることでありさえすれば、あなたは全てをやろうとする姿勢で構いません。北極星を見つめて下さい。

仕事をするということは、思考し、判断することの連続的なプロセスです。勝手に判断することは職務権限上許されるのか、組織として自分が勝手に行動することは秩序を乱すのではないか、という心配がつきまとうかもしれませんが、全ての北極星(行動指針)は、その判断がクライアントに価値を生むかどうか、です。

ルールと同様、ビジネスには正解もありません。正解を探さないで下さい。

世の中はあなたが思う以上に適当に回っています。
特に理系出身のあなたは、これまでに学んだあらゆる数学の公式から正しい解を導くことはとても自信があることでしょう。
ときにコンサルティングのプロセスでも、統計的に優位とは言えないデータを100%正しいかの様に扱うことがあります。理系出身で、研究室で教授に厳しく教えを受けたあなたは非常に違和感を持つことでしょう。

しかし、それでいいのです。
世の中は極めて多変数で動いています。統計的優位性、論理的整合性などをイチイチ考えていて正しい答えが出るほど世の中は簡単では有りません。
では、正しさとは何か。
世の中に正解があるとすればそれは、お客様、ひいては世の中に価値が生まれたかどうかが全てです。

社会に出てからは学生のときのように答えがない、という言い方を学生の時にされた記憶があるかと思いますが、まさにコンサルティングは「正解」を創り上げる職業そのものです。
またその「正解」を創り上げるプロセスで、大学生の時に培ったカンニングスキルがとても役に立ちます。

自分の頭で考えるな、真似ろ、パクれ、が合言葉です。価値さえ出れば何でもアリです。
もっと言うと、考えてもわからないところにこそ価値が眠っています。

市場にデータがなければ、自分で道行く人100人にアンケートを取ればいいですし、店の稼働率がわからなければ一日中その店に居座って数えればいいですし、大学生の卒業論文のフリをして企業に電凸してもいいんです。

正解を創るプロセスに正解なんてありません、スマートだろうが泥臭かろうが法に触れない限り何でもやる、そのためにはプライドは全て捨てて下さい。

3. 自分を大切にして下さい

ここまで厳しい話をしてきましたが、最後に一番お伝えしたいのはこの話です。
これまであなたは大人に守られて育てられてきた立場ですが、社会に出てからはだれもあなたのことを守ってくれません。あなたの親ですら、あなたを守れるほどもう元気ではないかもしれません。

あなたを守れるのはあなた自身以外にだれも居ません。
残酷な話ではありますが、あなたが倒れようが誰も気にしません。
労務管理をKPIとして負っている人が、少し舌打ちをする程度です。

クライアントに価値を出すことを北極星として頑張っているあなたは、ときに休むことに罪悪感を感じてしまうかもしれません。
それが自分への甘えなのか、本当の限界なのかは、身体を壊して倒れてからでないとわかりません。しかし、一旦身体が壊れてしまうと、もう元には戻りません。

プロフェッショナルのコンサルタントだからこそ休むのです。
高めの給与をもらっている立場だからこそ休むのです。

休むことは甘えではありません。
人一倍真面目なあなただからこそ、意識的に休んで下さい。

こんなことを書くとプロフェッショナリズムを疑われるかもしれませんが、紙が1枚や2枚なくたって、ミーティングが炎上することもありませんし、プロジェクトは破綻しません。
あなたが1ヶ月休暇をとったとしても、会社は潰れません。

自分の身体を大切にしてください、自分の人生を、大切にして下さい。
健康第一です。ちゃんと食べて下さい。ちゃんと運動をしてください。

そして、辛いときは逃げて下さい。
どれだけあなたを成長させよう、クライアントに価値をもたらそうと投げかけられた言葉であっても、否定されて良いのはアウトプットだけです。あなたの人格は誰からも否定されるべきものではありません。

この言い方は別にパワハラではない、私の頭が悪いせいだ、、などと考える必要はありません。それがパワハラに該当するしない等どうでもよく、あなたが辛いかどうか、継続的に明日からも元気に働けそうか、それだけを基準に考えて下さい。

コンサルタントとして、まず叩き込まれるのは「自責思考」です。
これはよく誤解をされがちなのですが、全て自分の責任だ、と考えるべきだというものではありません。そんなのつらすぎますし、そんなことをしていたら身が持ちません。
正しくは「自分ならなんとかできるかもしれない」、というCan-do思考のことを言います。

「あのひとがXXだからXXできない」というのは他責思考であって、「私がXXすればXXできるかもしれない」というのが自責思考です。「XXできなかったのは全て私の責任である、私の頭が悪いせいである」と思うのは、自責思考というよりもただの自己嫌悪です。

コンサルタントという職業は、どれだけ出世している人でも挫折の連続です。自分を責めすぎず、健全な責任感で持続的に働くことを何よりも大切にして下さい。

そしてどこかで、お会いしましょう。お元気で。